小学生低学年の頃は今と違ってゲーム機も持ってなかったし、外で遊びまくってた。

 

昔は家の前に花壇があって、そこにサルビアが咲いていたのでその蜜をひたすら吸ったりしてた。今は親が年を取り、世話をするのが大変になったみたいで、緑色の雑草だけが一面に生い茂ってる。

 

近所に駄菓子屋があったので、そこで母親からせびった小遣いで、当たり付きのきなこ餅(爪楊枝に刺してあって、先の方が赤く塗られていたらもう1本貰える)を無限に食べたりした。俺が中学生になる頃には店主の婆さんが病気にかかったらしく、一年中電気がつかなくなった。今ではその店も取り壊されて、車が4台ほど停まれる駐車場になっている。

 

自転車を買ってもらった時には、家からどこまで離れた場所に行けるのかを試したくて、死ぬほど漕いで全く知らない場所まで来たのは良いものの、いきなり辺りが暗くなってきて、大声で泣きながらなんとかかんとか家まで帰ったら、「こんな時間までどこをほっつき歩いてたの!!」つって、母親に頭を殴られるわ、父親からは頬に張り手を喰らうわで散々だった。今の俺なら、疲れることもなく歩いていける距離だった。

 

学校から帰る途中に、一軒の家があった。

担任の先生の家だった。

玄関から見える位置にある部屋には、その担任の母親と思われる婆さんが座っている。

いつ見ても同じ位置に座っているので、俺も目を合わせたら「おはようございます」とか「さようなら」といった挨拶をしたり、婆さんがくれるお菓子を貰ったりしていた。

婆さんはよく、その部屋でゲームをしていた。

画面の上から、赤い物や青い物が落ちてくる。婆さんに聞くと、『ドクターマリオ』というゲームらしい。

当時の俺は、ゲーム機に触ったこともなかったので、婆さんが手に持つコントローラーの操作に合わせて、画面の色とりどりの物体が動くのが不思議でたまらなかった。

しかも聞くところによると、ゲームのソフトはこの1本しか持っていないという話で、それにもかかわらず何年何年も、この『ドクターマリオ』だけをプレイしているそうだ。

 

「……」

「……どうかしたんね?」

 

物珍しそうに画面を見つめる俺に、婆さんが声をかけてきた。

 

「……」

「……」

「やってみるか?」

 

その問いかけに、はち切れんばかりの大声で「うん!」と答える。

 

………

 

その後しばらくして、いつものあの部屋に、婆さんは姿を見せなくなった。

 

少し不思議に思ったが、俺の中では「ドクターマリオが遊べなくなっちゃったなぁ……」という気持ちだけが、心の大部分を占めていた。

 

それから一度も会っていない。

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