永遠

俺が生まれた小さな村の小さな公民館で行われた成人式。

参加している人間は半分もいない。かなり静かなものだった。

 

式に参加した新成人(俺含め)の名前が1人ひとり呼ばれていく。

 

その時。

 

「え~、みなさんと一緒に20歳を迎えるはずだったルーカス・フェーハス君ですが、故郷のブラジルで15歳の時に亡くなっております。お悔やみ申し上げます……」

 

「えっ」

 

参加者がどよどよしてくる。

 

とはいえ、進行には特に支障なく、その後またすぐに他の新成人の名前が呼ばれていく……。

 

俺はというと、「ルーカス」という、懐かしい名前を聞きながら昔を思い出す。

 

 

―――――――

 

 

小学校低学年の頃、うちのクラスに留学生が入ってきた。

 

「初めまして、ルーカスです。よろしくお願いします」

 

頭を下げる。

 

ルーカスはブラジル出身で、父親の仕事で生まれて間もなく日本で暮らすことになったらしく、日本語は上手だった。

髪の毛は金髪で、肌は白かった。そもそも外人を初めて見たので、ブラジル人が全員こんな感じなのかは分からなかった。

 

外見以外はどこにでもいる小学生という感じだったので、クラスの人間も最初は物珍しく思っていたけど、1ヶ月もすれば他の人間と同じように馴染んでいた。

 

俺はというと、小学校低学年の頃は今ほど人間が怖くなかったのでルーカスにも普通に話しかけたりしていたと思う。

 

そのうち友達になった。

 

ルーカスは俺の家の近所にある賃貸アパートに家族で暮らしていて(というか裏庭のすぐ近くだった)、放課後や休みの日には、よく遊んだりしていた。

 

小学生と言えばゲーム、ゲームといえばテレビゲームだった。

 

俺の家には灰色のプレイステーションが置いてあったので、それで初代クラッシュバンディクーやスパイロ・ザ・ドラゴン、クロック!パウパウアイランドといったアクションゲームを交代でキャッキャ言いながらプレイしていた。

 

ルーカスの家には黒いセガサターンがあったので、彼の家に遊びに行った時にはバーチャコップダイナマイト刑事(警察好きか?)みたいなゲームを遊んでいたと思う。記憶が曖昧なんだけど。

 

「死んだら交代だから!」とどちらが言い出したかは分からないが、そういうルールで常にプレイしてた。

 

でも結局どのゲームもクリアできなかった。

 

2人ともゲームがヘタクソだったし、2人で遊ぶと決めたゲームは2人でクリアするんだと言って、1人でいる時は遊ばないようにしてたから。

 

学校生活でどういう付き合い方をしたかは全然覚えてない。

 

 

そんな日が2年ぐらい続いたある日、ルーカスは転校することになった。
というか、国に帰ることになった。

 

クラスの人間たちは別れを惜しんで泣いたりしてたと思うけど、俺は特に思うところはなかった。

 

だって同じ世界にいるんだから、ブラジルに行ったとしても、いずれまた会うこともあるだろうと感じていたから。

 

俺とルーカスが最後に遊んだ日、俺は彼の家に行った。

最後にプレイしたゲームは思い出せないけど、俺が自分の家に帰る時、

 

「これあげる」

 

と言って彼がゲームを渡してきた。

なんだろ、と思って見ると、

 

バーチャコップ

 

だった。

 

なんで、と理由を聞いたら「いらないから」らしい。

 

家に帰る俺を笑顔で見送っていた彼だったが、一方俺はというと、
「うちプレイステーションしかないけど、どうやってプレイすんだこれ……」
と悩んでいたと思う。

 

ルーカスがブラジルに帰った後、遊ぶ相手もあまりいなかった俺は、一抹の寂しさを覚えつつも次第に彼がいた記憶も薄れていった。

 

 

彼がくれた『バーチャコップ』はまだ家にあると思う。

 

 

―――――――

 

 

そんなことを成人式で思い出したりしてた。

 

死んじゃったからもう会えないんだけどね。

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