長い文章ばっかり書いてたら、何が面白くて何が面白くないのか分からなくなってきた。

昔のブログ記事を読んでたら、昔の俺の文章の方が面白く感じてしまった。

長い短いは関係ないんだな。

ようはその時の俺が面白いか面白くないかだと思う。

今は多分、まったく面白くない。

俺自身がつまんない。

終わりだよもう。

昔、村上龍の『13歳のハローワーク』を読んだ。

家のベッドでずっと寝てる俺を見て、母親が買ってきてくれた。

色々な職業が載っていたので、自分でもなれそうな職業を探したりするのに躍起になっていたけど、すぐに諦めた。

俺になれそうな職業なんて、まったくと言っていいほど無かったから。

 

でも1つだけ、印象に残っていた職業がある。

それは「作家」だった。

『作家というのは人がなれる「最後の仕事」だ。ホームレスでも死刑囚でも、引きこもりでもできる仕事は作家だけである。「自分に残された道はもう作家しかない」。そう思った時に作家になればいい』

という感じの文が書いてあった。

 

そうなんだよな。

11,680円

高校の頃に引きこもりのまま過ごした日々。

当時は昼まで眠り、母親の「お昼ごはんできたよ~!」という声とともにパジャマのまま階下へ降り、食べ終えた後はボーッと『笑っていいとも!』と昼のワイドショーを眺め、ウトウトしているとそのまま夕方になり、夕食を食べ終えたら自室へ戻り、好きなゲーム音楽を聴いたまま眠りにつく。そんな生活を送っていた。

そういう生活を何ヶ月か続けていると、まともに声が出なくなり、何かに返事をする時も「え? もう一回言って」と聞かれるようになる。

だんだんと自分が人間ではないという気持ちになってくる。人間じゃなければ虫である。

 

虫みたいな生活………

 

母親から『知り合いのところでバイト、してみない?』と言われたのは、そういった生活から脱するためには良かったのかもしれない。

 

実際、脱することはできなかったのだが……。

 

――――――――

 

「ど、どうもこ、こ、こんにちは。りょ料金はですね、30分、3000円になっています……ええ……」

 

生まれて初めての接客にビビリまくる俺。大きい声を出そうとすると吃音癖が出てしまう。お客はそれでもニコニコして、俺に3000円を渡してボートに乗り込む。

 

近所の湖畔にある貸しボート屋。

 

母親が、そこの店主の奥さんと知り合いだったので、ここで働く事になったのである。なんでも、夏には大学生がバイトをしに来るらしいが、それまでは人手が足りない状況が続くとのこと。といっても、人手が足りないというのは「ダラダラする暇を作れないから」という程度のもので、そこまで逼迫した忙しさではないらしい。

 

俺はそこで、接客のバイトとして雇ってもらうことになったのだった。

 

「おい」

「ヒッ…!」

 

後ろから肩を叩かれ、ビビる俺。

振り返ると、俺の他に唯一のバイトである高橋さんが立っていた。

高橋さんは見た目、かなり「やんちゃ」な感じで、髪は短髪で金色に染めており、アロハシャツを着た首元にはシルバーのネックレスが光っている。

 

「これから客をモーターボートに乗せるんだけど、お前『船舶』は持ってるよな?」

「へ……? 船舶……?」

「船舶だよ! 船・舶・免・許!」

 

船舶免許……? 船舶免許ってそんな普通に持ってるものなのか……?

持っていて当然みたいな聞き方をされて焦ってしまう。

小さくても、モーターボートを運転するには小型船舶免許を持っている必要があるらしい。初めて知った。

 

「いや、持ってないです、すいません……」

「持ってないのかよ……しょうがねえな、俺が出すか……」

 

そう言い残し、遠くで待っている客の方に戻って行った。

というか、俺に運転させるつもりだったのか……。

 

――――――――

 

ボート貸しのバイトは正直なところ、かなり楽だった。

俺が接客に慣れていないだけで、それ以外はほとんど湖畔のベンチに座って客を待つだけである。

客が来たらまず料金の説明をする。来たまますぐに乗れるものには『スワンボート』と『手漕ぎボート』の2種類があり、その他にはモーターボートなどもあるが、こちらは電話予約が必要なので俺の出番はほぼ無い。

まず客が来たらボートの種類、時間、料金の説明をして、客をボートに乗せる段になったら『あそこにブイが浮いてるのが見えますか? あれ以上向こうに行かないで下さいね。戻って来られなくなるかもしれないので……』という言葉を添えて送り出す。これだけである。

時給は800円。午前9時から午後5時までずっとこれを繰り返す。

 

「……」

「……」

 

午後2時頃。客足も少なくなってきた。それもそうで、今日は平日である。

俺と金髪の高橋さんは、湖畔の掃除をして拾ってきたゴミを、錆び付いて所々穴の空いたドラム缶で燃やしながら、向かい合ってベンチに座っていた。

ゴミは黒い煙を出しながらパチパチと燃えている。湖畔はいつも強い風が吹いていて、たまに俺の顔に煙を叩きつけてくる。その度に俺は咳き込み、顔の表面がパリパリに乾いていくのを感じる。

 

「○○」

 

高橋さんが、燃えやすいようにドラム缶の中のゴミをかき混ぜながら俺の名前を呼んできた。

 

「な、なんですか」

「お前さ、趣味とかないの?」

「趣味……?」

 

趣味……。

 

人に言えるような趣味を持っていないので本気で困った。漫画も読むが、気持ち悪いオタクが読むようなもの(いわさきまさかずの『ポポ缶』や、古賀亮一の『ニニンがシノブ伝』など)しか話せるものがなかったし、音楽もゲーム音楽しか聴かなかった。そんな趣味のことをを話しても、白い目で見られるのは明白だった。

 

俺は……。

 

「げ、ゲームです」

 

っつった。

これが限界だった。

 

「なんの?」

「ファ…イナルファンタジー…とか、ドラクエとか……ですかねぇ……?」

「ふーん」

 

これくらいなら、セーフじゃないか……?

 

「……」

「……」

 

 「あっそ、で、俺の趣味はさ……」

何事も無かったかのように続ける。

「これ」

 

見ると両手で柄つきのタオルを広げている。

そのタオルは赤地で、模様としてアルファベットと真ん中に稲妻みたいなマークが黒色で刻まれている。

 

「E.…YA……Z……AWA……?」

「そう、YAZAWA。矢沢永吉だよ」

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矢沢永吉?」

「栄ちゃんのライブを見に行くのがさ、毎年恒例なんだよ」

高橋さんは満面の笑顔になる。

 

「でもな……」

急に顔色が曇る。

「今年は行けそうに無いんだよな……」

「……あ、そ、そうなんすか……」

 

俺は、なんて言っていいか分からない……。

矢沢永吉は名前を知っているだけで、歌を聴いたことも無ければ、そもそも興味すら無い。慰めても変になりそうだし……。

 

返答に困った俺は、滑空するスカイフィッシュを眺めるように、一見すると何も無いように見える空中に向けて視線をキョロキョロさせていると、

 

「まあ、それはいいんだけど」

「は、はぁ……」

 

いいのか……?

 

「お前もさ、なんか趣味を持てよ。声も小さいし、暗いんだよお前は……」

「え?……はい……」

 

あ、そういう話だったんだ……。

というか、ゲームは趣味とは認められないんだな……。

 

――――――――

 

そんなことがあった後、客が来る気配もないので、高橋さんから「陸に揚げてあるボートを掃除してこい」と言われた。

スワンボートや手漕ぎボートは、その日の客足に合わせて、湖に浮かべて桟橋に待機させるものと、陸に揚げておくものの数を調整しているみたいだった。あまり多くのボートを湖に浮かべていると客を乗せる時に邪魔になるし、痛んでくるらしい。

湖の水をバケツに汲んで、軽い汚れがあるところは雑巾がけ、土などがこびり付いているところはモップがけと、使い分けながら掃除をしていく。

人と接するよりはこっちの方が楽だよなぁ……と思いながらスワンボートの、人を馬鹿にしたような顔を磨いていると、

 

「おい○○!! いま手が離せないから、ちょっと客の相手をしてくれ!」

 

と、高橋さんが大声で呼んできた。

 

俺は聞こえたか聞こえてないか分からないような声で返事をすると、走って窓口に向かう。

 

そこには家族連れの姿が見えた。父親風の男が俺の姿を見ると、

「お? 遅かったんちゃうか? はよ説明しぃや」

と関西弁で喋りかけてきた。

 

俺はというと、

(わ~~~~、関西弁だ~~~~)

と、半ば興奮していた。関西弁を喋る人間を、テレビ以外で見たのは初めてだったからである。

 

「兄ちゃん若いなぁ~、大学生か?」

「い、いえ、高校生です」

男は馴れ馴れしい口調で接してくる。

「ほぉ~…ま、ええわ。で……なんぼ?」

俺は気を取り直し、説明をする。

「え~~~、30分で3000円になります……」

すると、男の顔色が変わった。

「は?? たっか〜〜!! もうちょいまけてくれんの?」

露骨に嫌そうな顔をする男。

「え~~とですね、ダメだと思います……」

料金に関しては、俺が決められる事ではないので、そう答えるしかない。

「お〜〜い、遠くから来てんねんで? もうちょい気ぃ利かせられへんの?」

「あの……ちょ、無理……」

「はぁ~~~~~~~~~~~~ぁ」

めちゃくちゃ苦手なタイプだった。

というか、こういうテレビで見るような身振りの関西弁の人なんて、本当に現実にいるんだ……と逆に感動してしまう。

 

「なぁ、何でもええから、はよ乗らん?」

そのやりとりを横で見ていた母親風の女が、急かすように男に言う。

「あ~~~~~しゃあないわ、ホラ、これでええんか?」

男は俺に料金を、叩きつけるように手渡してくる。

「………ありがとうございます」

俺はホッと息をつく。

何とか難を逃れたようだった。

 

その後も……

 

手漕ぎボートに乗る際に、足元に空いた穴(排水口。穴が開いていても、船体は浮くので問題ない)からチャプチャプと入る水を見て「おい!! 穴が空いとるぞ! 沈むんちゃうか!?」と怒鳴ってきたり……

ボートの上で子供が暴れて落ちそうになったり……

境界線のブイを超えて向こう側に行こうとしたり……

それらに対応をするだけで、かなり精神を削られてしまった。

 

後ろを振り返ると、高橋さんは遠くのベンチに座り、タバコを吸っている最中だった。

 

――――――――

 

「おつかれさま~~~」

「……はい」

 

午後5時になり、店主の奥さんが俺に声をかけてくる。

俺は生まれて初めて仕事をした疲れからかな、頭が痛くてしょうがなかった。朦朧とした意識の中、店主の奥さんに返事をする。

 

店主の奥さんは、スチールか何かでできた小さい箱を窓口から取り出し、中身をゴソゴソとかきまわす。

 

「じゃあ、今日のお給料ね」

「……!」

 

俺の手に、紙の束と少しの硬貨が手渡される。

6400円。

俺が初めて自分で稼いだお金である。

 

「……!……!」

 

正直、めちゃくちゃ感極まっていた。

今まで自分の働きに対して、それでお金を貰えた事がなかったからである。

今までは、親から「お金を払って学校に行かせてるのに、何でこうなっちゃったのかねぇ……」とか「お金を稼ぐのがどれだけ大変か、アンタ分かってんの!?」といった言葉しか掛けられなかった。

ただ生きているだけで、お金を消費する物体……。

それが俺だったからだ。

 

でも、今回はそんなことない。ちゃんと自分の働きでお金を稼げたんだ。

感動していた。

 

「ありがとうございます……」

俺は頭を下げる。

「明日も来てね」

店主の奥さんは笑顔である。

 

「はい……」

 

もう一度頭を下げる。

 

――――――――

 

その後。

 

何日かバイトを続け、前から欲しいと思っていた『AKG K240S』というヘッドホンを、サウンドハウスで注文した。

 

自分で稼いだお金で、初めて買った。

そう思うと、愛着が湧いてくる。

 

これを買ってから、ゲーム音楽を聴くのが一段と楽しくなった。今まで使っていた安いイヤホンとは全然違う。今まで死ぬほど聴いて飽きてきた曲も、全然違うように聴こえて新鮮だった。

 

今でもこのヘッドホンで、たまに音楽を聴いたりする。

 

なんだかんだで、バイトは数日で行かなくなってしまったけど、わりと良い経験だったと思う。

 

それでも学校には行かなかったけど。

 

 

 

おわり

時間

バズマザーズのCDを何枚か買った。

Amazonから届いた箱。開封するとジャケットのデザインは結構好みで、期待が持てる。

ケースを開封してCDを眺める。俺はその円盤を持ったまま裏返す。CDをかける前はいつも裏側を確認する癖がある。

PCのトレイに入れた後、何曲か聴いた。

 

「??」

 

首を捻る。

確かに、ギターの音とか声は変わらず好みのものだった。

でも”””違う”””という感覚が抜けない。

その時、俺は気づいてしまった。

 

ああ、『もうハヌマーンの時のような新曲を聴くことはできないんだろうな』って。

 

思えば、こういう感覚は色々な場所で経験してきた。

 

西尾維新の新しい本を読んでいる時も、『ああ、もうクビキリサイクルみたいな話を読むことはできないんだろうな』とか思う。

遡れば、モノリスソフトゼノブレイドをちょっと遊んだ時も、『ゼノギアスみたいなゲームを一生遊ぶことはできないんだろうな』って思った。

 

間違っても、西尾維新の新刊もゼノブレイドも、「面白くない」とか「悪い」とかいうわけではない。

バズマザーズにしたって、『文盲の女』とか『月と鼈』とかは、かなり好きな曲だった。 

 

でも全然違う。歌詞に、ハヌマーンの時にあった”””視点””””みたいなものがなくなっていた。

 

違った。

 

これは、俺が好きになったものではないんだよな。

 

でもこういうのが正しいのかな、とか思ったりした。

 

そんな感じ。

過ぎ去った日々を想う愚かさ

母親の作る料理がかなりマズかったのが判明したのは、俺が大学生になって間もなくの事だった。

高校生までは実家で暮らしていたので、毎日の食事は母親が作っており、俺はそれを毎日食べていた。大学に入ってからは東京で一人暮らしを始めたので、自分の意思に関係なく自炊をする事になったのである。

大学の帰り。近所の駅前に西友があったので、そこで『マルちゃん焼きそば』と鶏肉、あとはキャベツとかの野菜を買って帰った。

鶏肉を細切れにしてフライパンで炒める。あとは一口サイズに切った野菜をバラバラ入れて、若干しんなりしてきたら麺を投入して少しの水を加える。水が無くなってきたら粉末ソースを絡めて出来上がり。

皿に盛りつけた、なんの変哲もない焼きそばを眺める。あまり美味しそうではないが、ソースの匂いは食欲を刺激するし、初めての自炊にしては上出来である。

買ったばかりの真新しい箸で、麺と野菜を丁度いい割合になるように摘み、口に運んだ。

 

モニュ……

 

「え?」

 

え?

 

「……」

 

旨すぎる。

 

正直、衝撃だった。

 

今まで母親の作った料理しか食べてこなかったから、食べ物の味を過小評価していたんだなって思った。

昔、白菜と肉を醤油で煮た料理を食べさせられた事があったけど、白菜のエグみが強すぎて、食べる度に吐きそうになっていたことを思い出した。しかも結構な頻度で出てきた。1ヶ月に4回くらい。

あれで白菜が嫌いになったので、今でも白菜を美味しく食べることができない。

というか、この焼きそば……。『自分で作った』という補正をかけたとしても旨すぎる。

 

あんまりだ……って思った。

 

悲しくなってきた。

 

あんまりだよ。

 

 

でも、母親の作ったもので、唯一好きだった料理もあったよな。

 

ニチレイの『本格炒め炒飯』を解凍したのがさ。

 

美味しかったんだよな。

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